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三季の家づくり。

昨日のブログの中で”三季の家づくり”という言葉を使った。

建築は専門ではないが、実家が材木屋だった事も、設計の道を志したきっかけが木造家屋だったので
常に目線はそこにも向けて来た。

日本の気候風土を考えたとき一番は木造の住宅が適していると思う。

戸建ての住宅を考えたとき、その工法も様々あるし、木造だけに限っていても
また作り方はそれぞれ違う。

ある年配の知り合いが言っていた実際にあった話。
屋根の下地、、いまは当たり前の様にベニヤ板をつかっているのだけれど
そのベニヤ板が、日にさらされ年月とともに風化したら、ベニヤ板の構造である薄い髪のような板がペラペラとはがれて行くんだ。

確かに、野ざらしになったベニヤ板はその構造上何層にもなった薄い板がペラペラとはがれている。
薄い板は接着剤で圧着されているわけだから確かに糊や板が劣化すればそうなるだろう。
ハウスメーカーやプレスカットなどでは
集成材の柱を多くつかっている。
集成材もある意味ベニヤと同じ考え方で狂いが少なく扱いやすくするために
小さな木片をつなぎ合わせ、張り合わせをしている。

集成材やベニヤの板を全否定するわけではない。
確かに便利で扱いやすいし場所やモノによってはこれの方がいい場合だってある。

しかし、住宅の構造をそういうものでまかなう事が正しいのだろうか?

木が山から切り出され、きちんと乾燥をされたものにはそんなに扱いづらいものは多くない。
そして、年月を経た構造材は木の特性である粘りがうまれて強度を増すのである。

しかし、集成材って、、どうなのだろうか疑問が一杯になる。

在来工法とは、昔ながらののみをつかい仕口を土台、柱、はりなど構造材に刻み
釘をつかわず組み上げたもので、その仕口を見たとき、神がそこには宿っているのではないかと思うほどの歴史と英知の結晶のようなものに見える。
それはそれは複雑で、どういう事であれとこれが組み上がるのだろうと頭の悪い私の中では
理解ができる事なども無く
神聖な気持ちにさせるほどのものだ。

そのむかし、地方の地主などは自分の山の樹々で家を建てた。
育った樹々を切り出し、乾燥を十分にして、材料を選りすぐって家を建てた。
それは木を切り出す以前育てる時間までも考えれば50年ぐらいは時間を要している。
いま、そんなことができる時代でもない。

様々なことが分業化されている。
在来工法は、阪神大震災で大きな誤解を受けた、、とわたし自身は思っている。

本来、木造の在来工法は、地震国日本のなかで培われて来ていたのだし
実際、あの仕口を見ればその堅固な事は一目瞭然だと思う。

阪神大震災で倒壊家屋に在来工法が多かったのは確かだろう。
年月の経過、その壁量などのアンバランスさなど改善をしなければならない事もあると思う。
基礎はあれからずいぶんと様変わりした。そういう事も必要だと思う。
でも在来工法を地震に弱いと結論づける事が私には疑問ばかり感じる。

これまでの意匠の成り立ちはデザイン性の欠ける部分だってあるだろう。
昔の家の間取りはふすまや障子などの建具を取り払うと大空間が生まれる。
いまの住宅に比べて壁が少ない事は地震にも弱かったかもしれない。

改善をするべき事はたくさん有ると思う。
しかし根本を考えてみれば、一番適した工法ではなかろうか。

日本の家屋は、木と紙と土で出来てた歴史を忘れては行けない。
無視しても行けない。

いま、八百屋で売られているキュウリ。
まっすぐに伸びた形の揃ったもの。
誰もが知っているのは、キュウリはまっすぐになったものではないという事。
なぜ?
自然そのものの形の曲がりキュウリって美味しいよ。
枝で熟した産直の野菜たち、瑞々しくて香り高いよ。
なのに、流通だ、見て暮れだと不自然な方を優先しているから
まずいものを選んで食べている。
みんなが徐々に気づいて来た。
不自然のまずさ。自然である事の美味しさを。

家も自然に合せてつくる事がどれほど心地いいのか。

檜の無垢の床材のわたしの家にきた30代の友人は、その触感に感激をしていた。
これが何十年かまえは当たり前だったのよ。
本来のものだった。

在来工法で家を建てれば、時間はかかるのである。
三季かかる家づくりは
工場で大量に刻まれた申し訳程度の仕口とは異なり、のみと玄翁で一本一本木と会話をしながら
刻んでいくし、
壁もビニールクロスをのりで貼るのではなく、下地を組んで下塗りをし上塗りをする。

そんな家は出来上がって、化学的な臭いなど無く、初めて姿を表したかのような削られた木の白かったりピンク色だったりの色合いと木の持ついい香りで溢れている。

きちんと作られた家はいま提唱されている100年住宅など当たり前だって事。

だから、三季かかるのである。

久しぶりに木の事をこうして書いていたら樹の香りが立ちこめて来たような気分。

雨の朝ですがいい一日を過ごしてください。
今日も来てくださってありがとう。
by sola-1-sola | 2009-11-12 08:16 | 建物

小さな玉から見えてくる世界とか。


by そら
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